FESPA2026で最先端を見たあとは、約2000年の歴史を持つ
「永遠の都」と称される歴史都市ローマに行ってきた
2026.7.13 | SWEAT.jp社長の視察記
FESPA 2026で最新技術を見たあと、そのまま日本に帰るのは勿体ないということで
世界有数の歴史・観光都市である「ローマ」でスーベニアショップを視察してきました。
ローマ
ローマは、約2,000年以上の歴史を持つイタリアの首都で、「永遠の都」と称される世界有数の観光都市です。
古代ローマ帝国の中心地として栄え、現在も歴史的建造物や芸術、食文化が息づいています。市街地が世界遺産に登録され、遺跡と現代の暮らしが美しく調和する魅力あふれる都市です。
バルセロナから約2時間。
FESPAの熱気を胸に「永遠の都」ローマへ到着!
バルセロナからローマへ到着し、まずはホテルに荷物を預けて街へ繰り出しました。
石畳の道や歴史ある建物が並ぶ街並みは、歩いているだけで古代ローマの空気を感じさせてくれます。
ヨーロッパもこれで6カ国目ですが、建物・遺跡の重厚感と美しい街並みはこれまでにない景色で歩いているだけで楽しい街だと思いました。
昼食には本場のパスタを。私は趣味でパスタを良くつくるので、是非とも本場のカルボナーラとアマトリチャーナは食べてみたくて楽しみにしていました。
シンプルな味付けながら素材の味がしっかりと生かされ、特にトマトとチーズの味は日本で食べている食材では味わえない独特な風味で美味しくて感動しました。
その後はローマを代表する名所であるコロッセオへ。
約2,000年前に造られたとは思えないほどの迫力とスケールに圧倒され、古代ローマ帝国の繁栄を肌で感じることができました。周辺を散策すると、歴史的建造物と現代の街並みが自然に溶け合い、多くの観光客でにぎわう活気ある光景が広がっています。
最新のプリント技術が集まるFESPAを視察した後だからこそ、最先端のものづくりと2,000年を超えて受け継がれる建築や文化、そのどちらにも人の創造力の素晴らしさを感じる一日となりました。
レオナルド・ダ・ヴィンチ国際空港からローマ・テルミニ駅までは直通列車で約30分。アクセスが良くて助かります。
ホテルに向かう途中で目に飛び込んできたのは、歴史ある教会の壁面に掲出された巨大なスマートフォン広告。
2,000年近い歴史を持つ建造物と最新のガジェットが同じ画角に収まる光景は、違和感がありながらもローマらしいと思いました。
グアンチャーレのタリアテッレ(平打ちの生パスタ)。
パルミジャーノチーズが濃厚で美味しかったです。
街を歩いていると突然出現した、迫力満点のコロッセオに目が奪われました。
コロッセオの前には世界中から多くの観光客が。
この日は暑かったのですが、皆さん長蛇の列に並んで観光していました。
コロッセオの回りにはいたる所に遺跡があります。
約2,000年の歴史に圧倒される、
コロッセオ周辺を歩くローマ散策
ローマを訪れたら外せない名所、古代ローマ帝国を象徴するコロッセオです。
約2,000年前に建設された巨大な円形闘技場は現在も圧倒的な存在感を放ち、そのスケールに思わず足を止めてしまいます。(コロッセオだけで色んな角度から100枚くらい写真を撮りました笑)
周辺にはかつて政治や経済や文化の中心地だったフォロ・ロマーノや、凱旋門として知られるコンスタンティヌスの凱旋門などの歴史的建造物が点在しています。
石畳の道を歩いていると古代ローマの人々も同じ場所を行き交っていたのではないかと想像が膨らみます。
世界中から多くの観光客が訪れる理由を実感するとともに、歴史ある建築物が現代の街並みに自然と溶け込むローマならではの景観に魅了されました。
長い年月を経ても受け継がれる建築技術や文化に触れ、ものづくりの価値や人々の創造力を改めて感じる貴重な時間となりました。
イタリアのものづくりを感じた、
ローマのセレクトショップ「VATURI」
ローマの街歩きで立ち寄った「VATURI」は、イタリアブランドを中心に取り扱うメンズセレクトショップでした。
店内にはレザージャケットやシャツ、パンツ、スニーカーなどが美しくディスプレイされ、落ち着いた空間の中でゆっくりと商品を見ることができます。
創業以来、イタリアらしいクラシックなスタイルと現代的なデザインを融合させたアイテムを提案し、素材や縫製にもこだわった商品を数多く展開しているようです。(https://vaturiroma.com/)
FESPAで最新のプリント技術やものづくりに触れた後だったこともあり、VATURIで感じたのは「良いものを長く使う」というイタリアならではの価値観。
派手さよりも品質や着心地、細部の仕上がりを大切にする姿勢を感じました。
トレンドだけを追うのではなく、長く愛されるデザインを提案するショップの考え方はオリジナルウェアづくりにおいても参考にするべきだと思いました。
一見しておしゃれなオーラを放っていたので、つい引き寄せられるように入ってみました。
木の什器と間接照明で構成された店内。
Tシャツをこれだけ丁寧に「見せる」陳列は日本ではあまり見かけません。
かわいくてカッコイイ、魅力的なデザインばかりでいいお店だと思いました。
伝統と新しさが共存するプリントデザイン
イタリアのデザインレベルの高さを今更ながら感じました
VATURIで印象的だったのは、ロゴやグラフィックが洗練されたTシャツのデザインです。
ハッキリとしたカラーリングに上質なコットン素材を組み合わせて、シルエットやプリントサイズ、配置のバランスまで丁寧に計算されていました。
派手な装飾に頼るのではなく、一枚で上品な存在感を演出するデザインは、イタリアらしい美意識を感じました。
トレヴィの泉から街のショップ巡りへ
ローマのスーベニアはとにかく「アイコン」が強い
ローマ観光の定番、トレヴィの泉へ。
細い路地を抜けた先に突然あの巨大な彫刻群が現れるので、驚きと感動が同時にやってきます。人の多さも尋常ではなく、コインを投げるのも順番待ちという状態でした。
そこから本業の市場調査ということで、街のスーベニアショップやアパレルショップを片っ端から見て回りました。
ローマのグッズで圧倒的に多かったのが「ROMA」の文字と、ローマ建国神話の象徴である「牝狼(ルーパ)とロムルス・レムス」のモチーフ。この2つがあれば、それだけでローマだと世界中の誰もが分かるという強さがあります。
バルセロナのガウディ、ロンドンの地下鉄ラウンデルもそうでしたが、強いアイコンを持っている街のグッズはデザインをこねくり回さなくても成立するんだなと改めて思いました。
トレヴィの泉。
写真では何度も見ていましたが、実物の彫刻の密度と水の透明感は想像以上でした。
「RACE AND GOAL」というスポーツウェアのショップ。
赤い外観にユニフォームがぎっしり。イタリアはやはりサッカーの国です。
ローマの方言「daje(ダーイェ)」が商品になっている
ローカルの言葉がそのままブランドになるという面白さ
街を歩いていて何度も見かけたのが「daje(ダーイェ)」という文字。
調べてみると、これはローマ方言で「行け!」「やったれ!」といった意味の掛け声で、ASローマのサポーターが使う言葉としても有名なのだそうです。
この一言がキャップやTシャツ、雑貨のデザインになって普通に売られている。観光客向けというよりは、地元の人が使う言葉をそのまま商品にしているという感じでした。
観光地の定番デザインと、ローカルにしか分からない言葉のデザインが同じ棚に並んでいる。
オリジナルグッズをつくるときに「内輪でしか分からないネタ」は避けられがちですが、むしろそこにこそブランドの体温が宿るんじゃないかと考えさせられました。
「ELVIS LIVES」という店名のショップ。
ローマにいることを忘れそうな品揃えですが、こういう店が普通にあるのが面白い。
店内には「daje」のロゴが入ったアイテムがずらり。
ローカルの言葉が完全にブランドとして機能していました。
デニム地のキャップに「daje」の刺繍。
ワンポイントだけなのに、意味を知っていると欲しくなるという良いデザインです。
「GREETINGS FROM ROME」のスウェット。
建国神話の牝狼をヴィンテージ調のイラストで表現していて、土産物なのに完成度が高い。
ローマのパスタは「引き算」の料理でした
カルボナーラとアマトリチャーナに感動
視察の合間の楽しみはやはり食事です。
前述の通り私は趣味でパスタをつくるので、本場のローマ料理は今回の旅でいちばん楽しみにしていたことのひとつでした。
ローマの伝統的なパスタは、驚くほど材料が少ないんです。
・カルボナーラ(卵黄・グアンチャーレ・ペコリーノロマーノ・黒胡椒)
・アマトリチャーナ(トマト・グアンチャーレ・ペコリーノロマーノ)
・カチョ・エ・ペペ(ペコリーノロマーノ・黒胡椒)
日本のカルボナーラのように生クリームは使いません。それなのに驚くほど濃厚で、素材の味がそのまま前に出てきます。
足し算ではなく引き算。材料が少ないぶん、一つひとつの質と技術がごまかせない。
これはデザインもプリントも同じで、要素を削るほど一つひとつの精度が問われるということなんだと、パスタを食べながら妙に納得してしまいました。
路地裏の小さなトラットリア。
看板も控えめで、地元の人が普通に入っていくお店でした。
本場のカルボナーラ。
銅のフライパンのまま出てくるのが最高です。想像よりもさっぱりしていて、それでいて濃厚。
アマトリチャーナと、薄焼きのローマピッツァ
ほぼ同じ材料なのに、組み立てが変わると別の料理になる
カルボナーラの次はアマトリチャーナ。
実はこの2つ、グアンチャーレとペコリーノロマーノという材料が共通で、そこに卵黄を合わせるか、トマトを合わせるかの違いなんです。それだけで、まったく別の料理になってしまう。
アマトリチャーナはローマ近郊のアマトリーチェという町の名前が由来で、もともとは羊飼いの料理だったのだそうです。トマトの酸味とグアンチャーレの脂、ペコリーノの塩気のバランスが絶妙で、これも日本で食べるものとは香りがまるで違いました。
そしてローマのピッツァ。ナポリのようにふっくらとした縁がなく、薄くカリッと焼き上げるのがローマ流だそうです。同じイタリアでも街が変われば正解が変わるというのが面白い。
素材はほとんど同じなのに、組み合わせと火の入れ方が変わるだけで別物になる。
これはデザインもまったく同じで、同じロゴ・同じ配色でも、サイズと配置が変われば別のTシャツになります。素材を増やすことより、手持ちの素材をどう組み立てるかのほうが効くんだなと、パスタを食べながら考えていました。
こちらがアマトリチャーナ。
トマトの酸味とグアンチャーレの脂、ペコリーノの塩気のバランスが絶妙でした。
薄いピッツァと生ハムの盛り合わせ。
ローマのピッツァはナポリと違って薄くてカリッとしているのが特徴だそうです。
「真実の口」と、ライトアップされた夜のコロッセオ
昼と夜で全く表情が変わるのがローマの面白さ
せっかくなので定番の「真実の口(Bocca della Verità)」にも行ってきました。
サンタ・マリア・イン・コスメディン教会の壁にある大理石の彫刻で、映画『ローマの休日』ですっかり有名になった観光スポットです。
もともとは古代ローマの下水道の蓋、あるいは雨水の排水口の装飾だったという説が有力とのことで、「嘘つきが手を入れると噛みちぎられる」という伝説は中世以降に生まれたものだそうです。2,000年前の排水溝の蓋が、映画一本で世界的な観光名所になっているというのが面白い。
そして夜、ライトアップされたコロッセオへ。
昼間の圧倒的な質量感とはまったく違って、闇に浮かぶアーチの陰影がとにかく美しい。
同じ建造物なのに光の当て方でここまで印象が変わるのかと、プリントの世界にいる人間として素直に勉強になりました。デザインにおける「光と影」の設計は、2,000年前から人を感動させる手法だったんだなと思います。
夜のトラットリア。
ローマは夜が遅く、21時を過ぎてからが本番という感じでした。
これが「真実の口」。
想像していたよりずっと大きくて、彫りも深く迫力がありました。
ライトアップされた夜のコロッセオ。
アーチの奥行きが光で強調されて、昼間とはまったく別の建物のようでした。
ヴァチカン市国・サン・ピエトロ大聖堂
「世界最小の国」で見た、桁違いのスケール
ローマの中にある世界最小の独立国、ヴァチカン市国。
面積は約0.44平方キロメートルで、東京ディズニーランドより小さいという規模なのですが、その中心にあるサン・ピエトロ大聖堂のスケールは桁違いでした。
ベルニーニが設計した楕円形のサン・ピエトロ広場は、円柱が並ぶ回廊が両腕のように広場を抱きかかえる構造になっていて、「教会が信者を抱擁する」という意味が込められているのだそうです。
デザインに意味を持たせるという発想が、これほど巨大なスケールで実行されていることに驚きました。
クーポラ(ドーム)はミケランジェロの設計で、実際に登ることもできます。せっかくなので登ってみることにしました。
サン・ピエトロ広場。
回廊の円柱が奥行きをつくり、視線が自然と大聖堂に集まる設計になっています。
ミケランジェロが設計したクーポラ。
下から見上げると、その巨大さに首が痛くなります。
実は「絵」ではなくすべて「モザイク」
大聖堂の装飾と現代のインクジェットプリントは同じ発想でした
大聖堂の内部に入って驚いたのが、壁面や天井を埋め尽くす膨大な装飾です。
そして衝撃だったのが、絵画に見えるもののほとんどが実は「モザイク」だということ。
湿度や経年による劣化に強いという理由で、油彩画の名画をわざわざ極小のガラス片(テッセラ)で再現しているそうです。近づくと一つひとつは数ミリの色の粒なのに、離れて見ると完全に絵画として成立している。
これ、まさにインクジェットプリントの網点(ドット)とまったく同じ考え方なんです。
小さな点の集合で階調と質感を再現する。私たちが最新のプリント機器でやっていることを、彼らは何百年も前に手作業でやっていたわけです。
FESPAで最新のDTFやインクジェットを見た直後にこれを見せられて、正直、少し打ちのめされました。技術は進歩しても、人が美しいと感じる原理はそんなに変わっていないのかもしれません。
大聖堂の内部。
中央に見えるのがベルニーニの「バルダッキーノ(天蓋)」。
この天井装飾のほとんどがモザイクだと聞いて、しばらく動けませんでした。
モザイクの天使の顔をアップで。
近づくと一つひとつが小さなガラス片。まさに「ドット絵」です。
金地に描かれたドームの天井。
光の角度でガラス片の反射が変わるので、時間帯によって表情が変わります。
狭い螺旋階段を延々と上って辿り着いたクーポラの頂上から。
楕円形の広場と、それを囲む回廊の形がよく分かります。疲れが吹き飛ぶ眺めでした。
ヴァチカンのスーベニアショップ
「宗教」という世界最古のブランドのグッズ展開
大聖堂の周辺には、ヴァチカン公式のショップから路面の土産物屋までスーベニアショップが軒を連ねています。
ロザリオ、メダイ、ポストカード、マグネット、そして歴代教皇のポートレートグッズ。棚一面を埋め尽くすマグネットの物量には圧倒されました。
興味深かったのは、扱っている商材はどこも似ているのに、店によって見せ方が明確に違うということ。整然と並べて一点ずつ丁寧に見せる店もあれば、とにかく物量と色数で圧倒してくる店もある。
同じモチーフでも、誰に何を売るかで陳列の設計がまったく変わるという、非常に分かりやすいサンプルでした。
オリジナルグッズも「つくって終わり」ではなく、どう並べてどう見せるかまでが商品なんだと改めて感じます。
大聖堂の近くにあったショップ。
建物の外観からしてもう雰囲気があります。
整然と並べられたメダイやロザリオ。
小さなアイテムでも、トレイに規則正しく並べるだけで商品が引き立ちます。
こちらは壁一面のマグネット。
この物量で押してくる見せ方も嫌いじゃないです。
大聖堂の内部は「余白ゼロ」の情報量
足すことで美しくなるという、もうひとつのデザイン
もう一度、大聖堂の中へ。
改めてじっくり見て回ると、天井も柱も壁も、隙間という隙間が装飾で埋め尽くされていることに気づきます。
ローマの料理や、街で見たTシャツのデザインが徹底した「引き算」だったのに対して、大聖堂はその真逆で、これでもかというほどの「足し算」。
それでいて、うるさくもごちゃごちゃもしていない。ひとつひとつの密度が高いのに、金・白・大理石という色数を絞り込んでいるので、全体としては破綻していないんです。
削ることだけがデザインではない。足すなら足すで、どこかに軸を通せば成立する。
削るか、足すか。どちらが正解ということではなく、決めた方向をどこまで徹底できるかなんだと思いました。
金色のモザイクで覆われたドーム。
写真では伝わりませんが、実際は光を受けて細かく反射しています。
身廊の天井。
柱や天井のすみずみまで装飾が施されていて、余白がまったくありません。
どこを切り取っても絵になるのが恐ろしいところ。
この密度を何百年もかけて積み上げてきたということに圧倒されます。
大理石の彫刻。
石とは思えない布のやわらかさの表現に驚きます。
硬い石で「布のやわらかさ」を表現するという執念
素材の限界に挑むという点では、プリントもまったく同じでした
大聖堂の中でいちばん足が止まったのが、大理石の彫刻でした。
衣のドレープも、肌の質感も、布の重みで垂れ下がる感じまで、あの硬い石で表現されています。触れば冷たい石だと分かっているのに、目はやわらかい布にしか見えない。
これは考えてみると、私たちの仕事とまったく同じことをやっているんです。
プリントも、平らな一枚の生地の上に、立体感や光沢や質感を無理やり出そうとする仕事です。発泡プリントで膨らませたり、厚盛りで陰影をつけたり、箔で光らせたり。素材そのものは平らな綿なのに、そこに「無いはずのもの」を見せようとしている。
素材の制約の中で、どこまで表現を届かせられるか。
使う道具は石のノミとインクジェットヘッドで全く違いますが、やろうとしていることは何百年も変わっていないのだと思います。
最新の機械を見た直後にこれを見せられると、技術の新しさよりも「何を表現したいのか」を持っているかどうかのほうが、よほど大事なんだと思い知らされました。
AS ROMAオフィシャルストア
バルセロナに続き、ここでも「その場でカスタム」の現場を見てきました
バルセロナでFCバルセロナの公式ショップを見てきたばかりなので、当然ローマでもASローマのオフィシャルストアへ。
1927年創業のクラブで、エンブレムはやはりローマ建国神話の牝狼。街のいたるところで見かけた「daje」の掛け声も、元をたどればこのクラブのサポーター文化から来ています。
クラブカラーである赤(ロッソ)と黄(ジャッロ)はローマ市の紋章に由来していて、ショップの外観から店内の什器まで、その2色で徹底的に統一されていました。
取り扱いはユニフォームを中心に、キャップ、トレーニングウェア、雑貨、ベビー用品まで幅広く展開。特にNEW ERAとのコラボキャップの棚は圧巻で、日本のスポーツショップよりも品揃えが豊富だったと思います。
街角にあるAS ROMA STORE。
クラシックな建物の1階に入っているのがローマらしい。
ASローマのユニフォーム。
あの赤(ロッソ)と黄(ジャッロ)の配色は、やはり他にはない強さがあります。
NEW ERAとのコラボキャップの棚。
この量とバリエーションはなかなか日本では見られません。
カスタムエリア。
プレス機で圧着している工程が、お客さんから丸見えになっています。
圧着前のネーム&ナンバー用シート。
この箔のような質感はシートプリントならではです。
ネーム&ナンバーの加工はシートプレスが主流
「加工しているところを見せる」ことが、そのまま価値になっていました
そして今回もありました、ネーム&ナンバーのカスタムエリア。
加工方法はバルセロナのバルサ・ストアと同様、カッティングされたシートをプレス機で圧着させる方式でした。文字はメタリックな箔感のある専用シートで、貼る前の状態を見せてもらうと「なるほど、こうなっているのか」と納得。書体もクラブ指定の専用フォントで、これだけでもうブランドになっています。
面白いのは、この作業をあえてお客さんから見える位置で行っていることです。
自分で選んだ番号と名前が、目の前でプレス機から出てくる。「その場で自分だけの一着になる瞬間」を見せるところまで含めて商品になっているんです。
SWEAT.jpでもネーム・ナンバー入れは対応していますが、「加工しているところを見せる」という発想は日本ではあまりありません。
つくる過程そのものが付加価値になる。これは店舗運営のヒントとして持ち帰りたいと思いました。
メルカート(市場)とスーパーマーケット
観光地ではなく「日常」のデザインを見に行きました
視察に行くと必ずやるようにしているのが、地元の市場とスーパーマーケットを見ることです。
観光地のスーベニアショップは「よそ行きのデザイン」ですが、市場やスーパーには「その国の普段着のデザイン」があります。
ローマの市場はガラス張りのアーチが美しい建物で、中に入るとパスタやオリーブオイル、チーズ、生ハムがずらり。パッケージのタイポグラフィや色使いが日本とはまったく違って、見ているだけで勉強になります。
面白かったのが、エプロンやミトン、エコバッグといった生活雑貨のコーナー。10ユーロ前後の日用品なのに、柄も配色もちゃんとかわいい。
価格が安いからといってデザインの手を抜かないというのは、イタリアの底力なんだろうと思いました。
ガラスのアーチが美しい市場の外観。
建物からしてもう絵になります。
市場の中。
パスタやオリーブオイルのパッケージデザインが色鮮やかです。
エコバッグやトートバッグのコーナー。
日用品なのに色数が多く、並べ方も上手い。
エプロンやリネン類。
この什器の使い方は日本の店舗でも真似できそうです。
10ユーロのミトン。
この価格帯でこの柄。デザインに対する当たり前の水準が高いと感じました。
「安いからこの程度でいい」がない
日用品にこそ、その国のデザインの地力が出ます
市場やスーパーを一周してみて強く感じたのは、価格とデザインの手数が切り離されているということでした。
10ユーロのミトンにも、数ユーロのエコバッグにも、パスタの箱にも、ちゃんと配色とタイポグラフィの設計があります。「安いからこの程度でいい」という発想がそもそも無いように見えました。
日本ではノベルティや販促グッズになると、どうしても「まずは単価をいくらに抑えるか」から話が始まりがちです。もちろんコストは大事なのですが、そこでデザインまで一緒に削ってしまうと、結局は配っても使われず、捨てられて終わってしまいます。
安くても、ちゃんとかわいい。安くても、ちゃんと使いたくなる。
これが実現できれば、ノベルティは「配る物」から「持ち歩いてもらえる広告」に変わります。
SWEAT.jpでも小ロット・低単価のご相談をたくさんいただきますが、価格を抑えることとデザインの質を落とすことはイコールではない。ローマの市場のミトン一枚に、そう教えられた気がしました。
ローマ最後の晩餐
生ハム、パスタ、ビステッカ、そしてティラミス
視察の最終日は、地元の人でにぎわうリストランテへ。
まずは生ハムの盛り合わせ。スペインの生ハムとはまた違って、イタリアのプロシュートは塩気が穏やかで香りが上品でした。
そこからパスタ、分厚いビステッカ(ステーキ)、締めにティラミス。
ティラミスはイタリア語で「私を引き上げて」という意味だそうで、疲れた体を持ち上げてくれるという由来があるとか。3万歩近く歩いた足には、たしかによく効きました。
バルセロナでもそうでしたが、ヨーロッパは夕食の時間が遅く、21時を過ぎてから店が賑わい始めます。長い時間をかけて食事を楽しむという文化そのものが、豊かさなんだろうなと思いました。
最終日のリストランテ。
白いクロスのテーブルが路地に並ぶ、いかにもローマという佇まいでした。
プロシュート(生ハム)の盛り合わせ。
薄さと香りが絶妙でした。
結局最後もパスタ。
滞在中に何皿食べたか分かりません。
ビステッカ。
シンプルに焼いて塩だけ。これがまた美味しい。
締めのティラミス。
「私を引き上げて」という名前の通り、疲れが吹き飛びました。
まとめ
FESPA 2026で世界最先端のプリント技術を見た直後に、2,000年前の建築とモザイクを見る。
今回のローマ視察は、この落差そのものが最大の収穫だったと思います。
最新のDTFプリンターが数十秒でフルカラーの絵を出力する一方で、サン・ピエトロ大聖堂では職人が何年もかけて小さなガラス片を並べて絵をつくっていました。
やっていることは「小さな点の集合で絵を描く」という、まったく同じことなんです。
技術は圧倒的に進化しましたが、人が美しいと感じるものの原理はほとんど変わっていない。だとすれば、私たちがやるべきは新しい機械を追いかけることだけではなく、その機械で「何を表現するか」を磨き続けることなんだろうと思いました。
そしてもうひとつ。VATURIのTシャツも、街で見た「daje」のキャップも、市場の10ユーロのミトンも、共通していたのは「余計なことをしていない」ということでした。
カルボナーラの材料が4つしかないように、良いものは削られている。
オリジナルグッズの仕事をしていると、つい要素を足したくなりますが、削る勇気こそがデザインを強くする。ローマの街全体からそう言われているような一週間でした。
SWEAT.jpでは小ロットから法人の大量ロットまで柔軟に対応していますが、技術を取り入れることと同じくらい「何を残して、何を削るか」を考えられるチームでありたいと、あらためて思いました。